ある時からぼくの人生におけるあらゆる選択の基準はガラッと変わり、きみの存在に気づくまでは主に妻が喜ぶかどうかで決めよう、って思ってた。もちろん、今も思ってる。だから、妻の理想の10%くらいしかできてないだろうけど仕事もがんばる、家事もがんばる、って思ってて、例えば今日ワイシャツを着てしまった後に昨日の洗いものが残っていることに気付いたけどまあ2分で終わるし(ワイシャツに汚れが跳ねたら嫌だなあ、と思いつつ)ささっとやってから家を出た。で、きみが妻の身体のなかに存在していると気づいて以来、その基準が明確にひとつ加わったの。きみがこの世にあらわれて、物心ついたときにぼくがどういう風に映るか、もう少し言えば「かっこいい父」になれているかというのが突然に、そしてすごく大きく立ち現われて、つまりはがんばらないとな、と思っているわけ。それは見た目、例えばハゲないようにしようとか、デブらないようにしようとか、腹筋は割っておこうとか、そういうこともそうだし、「あの仕事、うちの父なんだぜ、すげーんだぜ」って友達に自慢できるような父になろうと心から思ってるから仕事もがんばる。だれかのためにがんばるのはもともと好きだけど、妻のため、そしてきみのためってやっぱり全然心の入り方が違うんだ。英語話せないなんてだせーな、とか、速く走れないのだせーな、とか、そう思われないように、今日もがんばるから、きみもがんばって出てきてね。必ず自慢の父になれるようにすっからさ。(T)